品川女子学院とコラボ!?まだ見ぬゲームの可能性を描くDGTの展望

ゲーム開発 2019/09/25

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「プレイヤーに新しい体験、驚き、おもしろさを届け続ける」。DeNA Games Tokyoが大切にしていることです。近年はゲームの外へ飛び出して、ゲーム運営のノウハウを活かして新しい価値を提供することにチャレンジしています。ゲーム内に登場するアイテムを品川女子学院の生徒さんが考案する特別講座で何が生まれたか?女子校とゲーム会社という異色コラボの仕掛人の矢口岳史と、10年目を控える『スペースデブリーズ』の現プロデューサー・水野早織、異色の経歴を持つ品川女子学院の竹内啓悟教諭にインタビューしました。

自己紹介

ーーまずはお一人ずつ簡単に自己紹介をお願いします。

竹内 はい。ファーストキャリアは地方局で興行を中心とする事業を担当し、その後に教育出版社で新規事業を担当しました。そして教員になり、ここで今5年目になります。情報科の教諭をしておりまして、プログラミングや、最近はIllustratorやPhotoshopでのデザインの授業やビジネスプランを作ってビジネスコンテストに出す指導などをしています。

ーー女子校では珍しいカリキュラムですね。

竹内 そうですね。本校では「こういうことやりたい」と、教員が企画を出して実行できる風土があります。

ーーありがとうございます。では矢口さん、お願いします。

矢口 ファーストキャリアはキャラクターIPを保有する会社で、イベント企画からスタートしました。その後株式会社カプコンに入社し、オンラインゲームやスマホゲームのプロモーションに従事しました。積極的なコラボよりも、リアルなイベントとデジタルな経験が多かったですね。ゲーム業界の中でも異質だったかと思います。

ーーありがとうございます。では、最後に水野さんお願いします。

水野 音楽大学を卒業した後、マーケティングリサーチ会社に入り、いろんなメーカーさんやメディアの方と組んで市場調査の仕事を経験しました。その後、自分で愛を持ってサービスを届けることに関わりたいと思い、当時好きだったゲーム業界に転職しました。DGTに来る前にいくつかのゲーム会社でのプランナー職を経て、今は『スペースデブリーズ』『アクアスクエア』のプロデューサーをしています。

 

呼応する熱量。異色コラボがスピーディーに実現

ーーでは次にコラボの経緯と概要を聞かせていただけますか?

矢口 もともとDGTの事業戦略のひとつとして、「培ってきたゲーム運営のノウハウを活用して、ゲームの新しい価値を生み出していくことにチャレンジしていく」という動きがあります。一ヶ月に30人とか50人とか色々な企業や団体の方とお会いして、何か一緒にやりませんか?という風につてを探していました。たまたま参加したイベントの懇親会で竹内先生にお会いして、品川女子学院の特別講座などの取り組みを聞き、「これは一緒にやれたら面白いな」と。私の上司である社長に話したところ、その場で決裁がおりました(笑)。すぐに水野を入れて、3人でミーティングをし「うちはOKです!是非やらせてください!」と竹内先生にご連絡して、熱意をお伝えしました。

竹内 スピードがすごく速くて、やりとりが楽しかったです。お会いした翌週にはもう概要ができていて。12月に初めてお会いして、1月には講座を実施しました。

矢口 熱意しかなくて(笑)。「学校とゲーム」ってあまりないじゃないですか。CSR的な取り組みはありますが。私たちがやった企画ってかなりスケールが大きいものでした。こういう取り組みができる機会はなかなかないなと思ったので、ぜひやりたいなと。

竹内 名刺交換をして数分後には「なんかやろう」みたいな話になってました(笑)。

矢口 私と社長で話した時に、「女子校だったら女性向けのゲームと相性がいいんじゃないか」という、ざっくりしたスキームまでは作っていました。「じゃあ水野を巻き込もう」と。

水野 「やる!」って二つ返事で参加しました(笑)。12月頃だったので、年末年始のイベントなどかなり忙しい時期だったんですが、全然そういうことは考えず。詳細な企画があったわけではないんですが、「絶対面白いものになる」という感覚はあったので「すぐ打ち合わせに伺いましょう!」と。

矢口 打ち合わせでばーっと概要を作って、メッセンジャーで「こんなのやりたいです!」とやり取りしながら進めていきました。

竹内 トントン拍子にいろんなことが決まっていきましたね。いろんな企業さんと特別講座を企画する際、承認のプロセスに時間がかかることがあるんですが、今回の企画についてはそういうことが全くありませんでした。

ーーDGTの事業と取り組みを学校内でもご理解いただけたので、サクサクと実現したということでしょうか。

竹内 意志決定速いんですよ。「6割GO」というキャッチコピーがありまして。企画の内容がいいな、と思い日程を押さえて、もうやれるというような。

矢口 「こんな学校あるんだ」と驚きました(笑)。

水野 お打ち合わせとかで毎回お話しするたびに、「品女さんってすごいね」と刺激を受けていました。

竹内 よく言われるのですが、「教員だけで教育をする時代は終わっている」と。もっと学校外の様々な人たちと教育を作っていこう、色々な取り組みをしていこうという流れがあります。企業さんと協力するというのもわりと本校が先陣を切っていたと思いますが、最近は全国的にもトレンドになってきていますね。

ーー下準備なども大変だったのでしょうか? 想定していなかったことなどありましたか?

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水野 お打ち合わせして感じたのは、私たちって「ゲームが正」というか、「ゲームは面白くて良いものだよね」というのが前提として普段仕事しているのですが、学生さんとか教育サイドだと、必ずしもそうではない視点があるということですね。だからこそ本当に意義のあるものにして、「ゲームの企画をやると勉強になる」ということを、学生さんにも教員の方々にも、その先にいらっしゃる親御さんたちにも感じていただきたいなと。それは自分の中でプレッシャーでした。

矢口 コラボ自体は大きく2つの構成です。1〜2月に計3回、水野が講師として我々が授業を提供し、実際にゲーム内に登場するアイテムを考えてもらいました。そして、チームごとにプレゼンをしてコンペで勝ち上がったチームのアイテムを実際にゲームに組み込んで世の中に届ける。授業コラボとゲーム内コラボの二軸でした。

水野 他の企業さんとのコラボや講座の内容も参考にさせていただき、今回の企画にマッチするところを取り入れつつ、社内で揉みました。

意識した工夫は2つ。1つは学生さんにはプレイヤーの様子を見て考えることを繰り返してほしかったので、可能な限り公開できるデータを用意して、隠れたニーズを見つけられるようにすること。2つ目は、どんな思いで制作したかを私が語ることで、こだわりを持って制作することの大事さを伝えられるよう工夫しました。

 

ゲーム×教育”=?!  異ジャンルの相乗効果

ーー生徒さんたちの作り上げたものやプレゼンがすごく素晴らしかったそうですが、普段の授業のこういうところが役に立ったのでは?というところなどありますか?

竹内 普段の授業で「ペルソナ」を考えることはないですね。ターゲットを考えてみようとか、深掘りしてイラストに描いてみようというようなことは、中学1年生の時に多少触れますが、50分の授業の中のごく一部です。マーケティングの授業があるわけでもないので、「ペルソナ」などビジネスなら当たり前に使う単語に触れられたのもいい体験だったなと思います。

今回の講座で、生徒は盛りだくさんなことをほぼ2日間で学んだので、かなり詰め込んだと思います。

水野 質が本当に高くて、社内でも共有したのですが、社内メンバーも「負けてるかもしれない」「勉強しないと」と言う人が多くて(笑)。結論からきちんと入る、軸になった事柄を丁寧に説明する点が素晴らしかったです。

ーー一方的でなく、お互い学ぶことがあったということですね。

水野 何かしらの学びはあるとは思っていましたが、「こんなにもか!」と。持ち帰ってチームに伝えたら、メンバーも「いつも以上に気合い入れて作ります!」と。

「これ生徒さんに共有できますか?」とか「生徒さんからメッセージもらえないかな」とか色々なアイディアも出てきて、すごくチームも良い状態でしたね。

竹内 最終日のアンケートでフリーアンサーの回答をもらいました。「充実していた」という感想が多かったですが、「3日目の時間が足りなくて、もっと考えたかった」というような回答もありました。

水野 生徒さんたちのモチベーションが本当に高くて、教室内でも積極的に呼んでくれて。「もっとキャラクターが後ろから光るようにしたいのだけど、どうしたらそうなりますか?」「彩度これくらいですか?」とか色々聞いてくれて、すごく嬉しかったです。

竹内 デコアイテムなどは手描きの予定だったのですが、タブレットでその場でペイントツール開いてデザイン始める生徒も多くいました。ワークシートに描く欄があったのですが、iPadでやり出して。

矢口 納品データ作れたかもしれないですね(笑)。

竹内 ジャンルがすごく良かったと思います。例えばこれが消費財メーカーとか自動車メーカーとかだったら反応がここまで良くなかったのかなと思います。生徒にとってゲームは身近なものなので、とても親和性があったと思います。

ーー 普段の授業ではプレゼンの練習もされているのですか?

竹内 「情報」の授業が中学1年と高校1年であるので、そこで入門程度にはプレゼンをやったり資料を作ったり、学校活動の様々な場面でもプレゼンの機会があるので、多少慣れてはいるかなと思います。今回の講座は日程の関係で、プレゼンの準備をする時間が全くなかったので「ダメかな、みんな模造紙で発表するのかな」と思っていました。

ところが多くの生徒がプレゼン用のスライドを作ってきていて、かなりモチベーションがあったんだなと。希望者の受講なので、そもそもモチベーションは高いのですが、実際のゲームのアイテムに実装されるというゴールとインセンティブが明確だったので、よりモチベーションが高まったのかなと。

水野 「自分の考えたアイテムがゲームに出たよ!」って、ぜひ自慢してもらえたら我々も嬉しいですね。

竹内 一番良かったのは、水野さんがとてもキラキラしてたことですね(笑)。ゲーム業界って、僕からしてもどんな人がどういう風に働いているのかわからないし、生徒からするともっとわからないじゃないですか。「ゲームすごく上手い人がいるの?」「女性っているの?」とか。プロデューサーとかデザイナーとかプロモーターとか色々な職種があっても、イメージが湧かない。

今回「ああ、こういう人がこういう風に業界で働いているんだ、しかもこんな楽しそうに」というのが見えたことは、生徒にとっても良かったと思います。

ーーやってみて、改良の余地ありだなと思ったところは?

竹内 もう1フェイズ「デザイン実習」みたいなのもやってみたいですね。2018年から本校ではAdobeのPhotoshopやIllustratorを導入して生徒に使用させているのですが、もっとそれらをガシガシ使うフェイズがあれば、カリキュラム的にもさらにマッチして良いかなと思いました。

水野 時間がなくてかなわなかったのですが、みなさんに作っていただいたものに対して弊社のデザイナーなどがプロの目でブラッシュアップの指導をさせていただくなどを考えてました。弊社に見学とか遊びに来ていただいてもいいですし、インターンなども歓迎です。

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ゲームの新たな価値を「広げる」「深める」

ーー今回のコラボ、ビジネスとして振り返るといかがでしたか?

水野 『スペースデブリーズ』は9年目を迎え、今年は10年目に向かっていく大事な年だと捉えていて、この期間に『スペースデブリーズ』の様々な表情を見せたいなと考えています。新しい目線で見てもらった『スペースデブリーズ』を作ってプレイヤーさんに別の面も見せたかったので、大きな価値があったと思います。

今回、生徒さんの成果物やプレゼンは企画部が集まる場で共有したんですが、社内チャットでDMがガンガン飛んできて。「生徒さんがどんな様子だったかもっと知りたい」とか、そこから得られる『スペースデブリーズ』の可能性は何だったのかとか。

DGTのゲームクリエイターは割とブラウザゲームの未来について考える日々も多いので、希望の光みたいになれたのかなと思っています。

矢口 私は、ゲーム運営のノウハウとか培ってきたものは別の領域でも受け入れられる、価値を出せるという確信が取れました。なので品女さんとのコラボの後も、私たちが提供できる価値に対して課題を持っている領域にどんどん広げていこうという動きをしています。

ーー第二弾をやってみようというのは?

水野 いつでも!

矢口 試行錯誤のフェイズだったので「とりあえずいろいろやってみよう」が許されたので、第一弾はある意味やりやすかったですね。次はそれはもう通用しないので、きちんと狙って、例えば何かを最大化するとか、何か違うことをやるとか、難易度が上がりますね。

ーー矢口さんは色々な業界にアプローチされていますが、次のターゲットなどは?

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矢口 DGTが持っているタイトルと相性がいいジャンルですね。例えばキャラクターを売り出して行きたい業界、食品とかレジャーとか。

逆に教育もそうですが、ゲームがこれまで全く入ってこなかった業界も面白いなと思うので、両方でジャンルを開拓していっています。

水野 新しい価値を開拓したいですよね。例えば、今回私がこの企画を通じて伝えたかったのが「ゲームの企画ってセンスじゃない」っていうこと。

竹内先生がおっしゃった通り、「ゲームってすごいゲーマーがやってるんじゃないか」とか「すごいYouTuberがやってるんじゃないか」みたいなイメージ持ってる生徒さんもいらっしゃったと思います。そういうことではなくて、きちんとロジカルに考えて、きちんとプレイヤーさんに向き合ってやってることだというのを生徒さんに体験して欲しかった。

もしこれをきっかけにゲーム業界で働くことに興味を持っていただけたのなら、別業界だからこそできた化学反応なのかなと。

ーーそれはDGTのビジョンそのものですね。

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水野 『スペースデブリーズ』のプレイヤーさんは主婦層なんですが、生徒さんからすると自分のお母さんに近い層だと思うんです。考える時に周囲の人を見回して想像するとか、センスではなく身近な事からの積み重ねといったみたいな体験をしてほしかったですね。

ーー今回のコラボを踏まえて、今後こういうことをやりたいというのはありますか?

水野 10周年へ向かうところなのですが、今までよりプレイヤーさんとコミュニケーションを取ることに心血を注いでいます。タッチポイントがとても少ないので、いただいたご意見を運営としてどう考えているか、なぜこんな風に変えたのかとか、みなさんに支えられて作っている気持ちを届けたいです。

実は今回の取組で、プレイヤーさんから「自分も考えたい!」っていう声をたくさんいただきました。なので、プレイヤーさんのアイディアを実装するとか、ファンイベントを開いて同じようなワークをやってもらうことも考えていて、長年愛されてきた『スペースデブリーズ』をプレイヤーさんと一緒にさらに作っていきたいです。

矢口 ゲームを使って新しい価値を生む、そのために領域にどんどん広げていこうという動きをしています。今回は教育でしたが、より洗練させていって、例えばパッケージ化できないかとか、別のタイトルを使って新しい企画をできないかとか、深掘りしていきたいですね。「広げる」と「深める」の両輪でやっていきたいです。

今回の取り組みで私自身が一番面白かったのが、「面白そうなのでこんなこともあんなこともやりたい」というような、社内が盛り上がる動きがあると、企画が確実に良くなる。逆のパターンだと、どんなにいい案件でも面白いものにならないと感じました。社内が湧く企画、みんながモチベーションが上がるような企画を、私としてはやっていきたいですね。

ーーありがとうございました!

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